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黒「俺は・・この世界の人間ではない。」
『この世界の・・・人間・・・じゃない?』
何だかしっくりこない言い方ね。
そもそも人間ですらないはずだけど・・。
黒「そして俺は、この世界を3回ほど経験している。」
ナ「それで・・・?何をやらかしてくれる気だ・・?」
忍「待って。最後まで話を聞こうよ。」
(・・3回・・・?何をばかな。)
だから色々と知っていたとでも・・?
しかしそれでは・・・いや、でもそうか・・・
マリリスの名や他の事も、全て知ってて当然という事にはなるけど・・
そんな無茶苦茶な話が通るとでも・・
黒「そうだな。どこから話せばいいべきか・・
長くなりそうだ、歩きながら話してもいいか?」
忍「うん、黒さんがそれでいいのなら。」
ナ「わかった。そうしよう。」
黒「俺が元々いた場所はヴァナ・ディールという世界だ。
ここと似た平行世界みたいなもの・・だな。
いや、こっちの世界がヴァナの原点なのだろう。
そこでの俺の名は、・・そうだな、『F』・・とでも言っておこう。
こっち同様、向こうでも黒魔道師だった。
色んな戦場を経験してきた。
今のこの4人のような少数精鋭での戦闘が主だったが、
18人程度の中規模部隊に属して作戦に関わる事や、
もっと大きな軍の、数十人規模の大部隊を率いた事もある。」
ナ「なるほど・・・。」
黒「だがあの世界は何と言うか・・少し不安定な部分もあってな。
広い世界ではあるのだが、この世界のような大いなる目的が存在しない。
事実、あっちの世界での俺は、選ばれし者でも何でもない。
ただの1人の人間で、『冒険者』なんていう呼ばれ方で一括りされていた。
だからというわけではないが、しばしば目的を失ってしまう時がある。
いや、失う・・というよりも、各々の持つ様々な、極めて個人的な目的はある。
だがそれらが達成されてしまった後に襲い掛かる虚無感というか脱力感というか・・
そういった物に囚われてしまい、己を見失ってしまう時があるんだ。
かくいう俺もその1人でな・・・。
目指していた物事が全部達成されてしまい、いつの間にか欲する物も無くなった。
やがて俺は自らの存在意義を見失い、怠惰な毎日を送っていた。
そしてある時・・・気付いたらこの世界に飛ばされていたというわけだ。
いや・・或いは自分の意思でこっちの世界に飛んできたのかもしれないがね。
以前に来た事のある世界だ、懐古の念もあったのかもしれない。」
何を言い出すかと思えば・・またわけのわからない事を。
平行世界・・・とか意味わからないし。
(しかし・・なぜか真実味はある・・。)
こいつがマリリスなら、そもそもタイミングがおかしい。
それに、こんな意味不明な言い訳などせずに、さっさと殺しにくればいい。
あたしの読みは間違っていたのだろうか?
忍「にわかには信じられない話だけど・・
でも確かにキミはボクらの知らない色んな事を知っていた。
・・・そういう事だったのか・・。」
ナ「まあな・・・納得いく部分は確かにあるが・・
だが、そんな事は最早どうでもいい。
私の興味は一つだけだ・・・お前は敵なのか?」
『そうよ・・・そこが大問題だわ。』
敵じゃないとするとあたしには困ったことになるが・・
いや、まだだ。まだわからない。
まだ隠している事もある。
そこさえ突ければまだ・・・。
黒「信じようが信じまいが、俺はれっきとした光の4戦士の1人さ。
今やこの世界での俺の役割はそれ以外にない。
今のこの世界では、な。」
忍「・・・ボクは信じるよ。
たしかに今まで不思議なところはあったけど、
でも、でも・・結局最終的には全部ボクらの為に有益な事ばかりだったじゃないか。」
(いけない・・この流れは・・・
忍者がこう言うとナイトも信じてしまう。
・・・何か、何か言わなければ・・・)
『待って。さっきあんた言ったわね、この世界は3回目だとか・・
その意味がよくわからない。』
黒「ああ。3回目なんだ。
1回目・2回目に来た時がいつだったのか・・
そこまでは思い出せないが、3回目なのは間違いない。
だから飛空船の取得手順やバハムートの試練のような
重要な出来事そのものはしっかりと覚えていたが、
各地の洞窟の内部構造や細かな仕掛けなんかは全然覚えていなかった。
そして当然だがこの後に何が起こるかも知っている。
つまり4体のカオスを倒した後、誰が何を起こすか・・・な。」
『・・ぇ・・・!?』
あ・・・あたしの目的が・・・気付かれているの・・!?
背筋が凍る。
(まずい・・・こいつ、早くなんとかしないと・・・!)
なんということだ!
こいつの話はおそらく全部本当だ。
マリリスが化けているなんて次元じゃない。
あたしにとって、もっとヤバイ存在だ。
・・・迂闊だった・・・。
くそっ・・どうする・・・どうすればいいの・・・。
(こうなればここで3人とも始末するか・・・?)
いや、無理だ。
ティアマットはあたし1人で倒せない。
黒・・こいつ・・
そこまで計算し、このタイミングで曝したというのか・・・。
だめだ、落ち着くんだ・・・とりあえず話を逸らすのが先決だ。
まだナイトと忍者にはバレていない。
この2人なら・・後でいくらでも丸め込める。
(何か他におかしかった事はないか・・何か・・・・)
・・・ある。
これを上手く使えば、嫌疑をまた黒に戻せるはず・・。
『じゃあクレセントレイクの魔法屋での密談・・あれは何だっていうの?
それに・・・そうよ、あのバハムートの試練の後!
あの時あんたが発した異常な炎の魔力は一体どう説明するの・・!?』
黒「・・目敏いものだな。大したものだ。
密談なんて大袈裟なものじゃないが、あの時俺は或る黒魔法を探していた。
その所在を聞いたまでだ。大きな街の魔法屋だったしな。」
忍「ある魔法?」
黒「・・・フレア。
そもそもこの世界に来て、俺の最初の目的はそれだった。
向こうでも大事にしていた魔法だったものでな。
個人的な問題だが、自分自身の証明みたいな大切な魔法なんだ。
だから体系や理論はしっかり覚えていた。
だが、ここに着いたばかりの状態では扱えなかった。
ランクの低い、黒魔術士だったからな。
そして、龍王の試練によって俺たちはクラスチェンジをした。
俺としては、あそこでようやくヴァナ時代と同じ黒魔道師に戻れたんだ。
元々フレアの理論は熟知している。
火系統のベクトルを調整していけば扱えるはずだと思った。
それであの場で試してみたわけさ。
試しただけだ、というのはその場でも説明したはずだがね。」
ナ「あ・・・ルフェイン人の町か・・・?
そこにあったんだろう、その魔法・・」
黒「・・・驚いたな。何故わかった?」
ナ「ふ、逆に心外だね。私の目は節穴じゃない。
一旦分かれて合流した、あの時に感じた気迫のような物を見逃すわけがない。」
黒「そうだ。クレセントレイクで得た情報どおり、
その魔法はルフェイン人の町の僻地で売られていた。
そこではっきりとわかった。
いくら理論どおりに火系統を調節しても使えなかったわけだ。
この世界でのフレアは無属性魔法だったんだ。
高熱と光を発生させる魔法だが、火属性とはまるで異なる系統だった。
名前も少し違っていてな、フレアではなくフレアーが正式な名称だった。
ヴァナではフレアという名なんだがね。
それに・・今だから言えるが、ロゼッタ石にこだわっていたのもその為だ。
フレアを求めた時に、その所在こそ覚えていなかったが、
ルフェイン人の町にあると知った以上はロゼッタ石が必要になるのは覚えていたからな。」
(そんな・・・そんな・・・!)
今までの事、全ての話の筋が通ってしまっている。
いや・・今更疑う余地がない。全ての真相を語られた。
それに、仮にこれらが実は全部マリリスの狂言だったとしても、
どっちみち今のあたしにはどうする事もできない。
やられた・・・こんな屈辱は初めてだ・・・。
忍「・・・じゃあさ、この後に起きる事って何?
ティアマットを倒し、4体のカオスが消滅しても世界は平和にならないの?」
(しまった・・・!
今それを答えられたら終わる・・・!)
黒「ああ・・
そこまで話すつもりだったが、どうやらその必要もなくなったようだ。」
黒がちらっとあたしの方を見る。
ニヤリ。としたようにも感じた。
『な、何・・?どういうことよ・・・?』
ナ「あ~なるほど、そうみたいだな。
そうだな、わざわざ聞くまでもない、か。」
ナイトがあたしのいる方に向かってくる。
剣を抜いている!
忍「え、えっ・・あ!
白・・さん・・・!?」
くそっ・・・この状況・・まずすぎる・・・。
(・・・いや・・・やめて・・・。)
こんなところで・・・・終わってたまるか・・・・!
つづく。
がんばれ白さん!
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